今頃、ですが。
去年東京芸術劇場で配られたリーフレットの野田秀樹さんの文章がとても心に響いた話。
劇場のHPを探しましたが載っていないのでこちらに。
もし問題があるようでしたら削除しますので、教えて頂けますと有難いです。
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一部引用させて頂きながら。
<インターネットとやらが、流行りだした頃から、文化というものが怪しくなっているのを感じていた。それは、「匿名性」が生み出す文化の怪しさであり危うさである。>
このことが演劇の世界にも無縁ではないことが語られています。
私がたまに観てきたものに対する感想文を書きますが、それはあくまで感想文です。そんな感想文がネット上には無数に乱舞しています。ではその無数の感想文を、例えば○か×かに無理矢理振り分けて採決を取った結果がその芝居をすなわち良い芝居か悪い芝居なのかと評価することになるかと言えば、至極当たり前のことですが、そうではありません。
ネット上における危うさには、「想いの過熱」があると感じています。
それは何事においてもそうです。
演劇やミュージカル、あらゆるパフォーマンスにおいても、まあ、狭い世界、日本のどこかのそこここの話ですが、この「想いの過熱」で溢れかえっている光景を目にします。
別に熱い想いが溢るるのはいいんですけれど、そこに温度差を持つ意見が挟まると「それは違う!」という、水を差すんだか、火をくべるんだかの、過熱しすぎた想いがわっとその温度差を消そうとする動きが気になります。
これが相手の顔が見える状態での会話でしたら、「そうか、君の感想はそうなのか」で終わるところが、匿名の自由な仮想空間の中では己の熱が自由になりすぎて、「絶対」という想念が己にストップをかけないことを許してしまうのかもしれません。
本来なら掲示板やコミュニティというのは、多数の意見を見聞し、交換し、そうすることで見に来た人が何かを得るという、使い方によっては非常に有意義な場所であるのに、そうでない場所を訪れてしまうと、なんともがっかり致します。
演劇というのは非常にカルトな世界であるので、「これは良いといったら良いんだ!」という渦を作り、そこに参加することで気持ちよくなれるという特殊な快楽を得る場所とする、というのも、ありっちゃありかな、とは思いますが。
でも、それはそれ、そういう場所も作っておいて。もうひとつ、ご贔屓といえども褒めてばかりでなく、褒める以外のこともちゃんと言いますよ、という姿勢もあって然り、ではないかと思うのです。
でもね、これを匿名性の世界でやると、痛い目を見ることが多いみたいで、かく申す私も、いまひとつだったな・・・的な正直な感想はネット上には晒すことができないでいます。(良いと思ったことはどんどん書くけど)
だから、本気の感想は実際に、人とのコミュニケーションの中でしか、言っていないと思います。あるいは直接作った人にアンケートで伝える、など。
肝心なのは、ネット上の意見に振り回されることなく、演劇ならば可能であるなら自分で劇場に足を運び、自分の目で確かめ、自分で感じ、同じものを観た人と直接会話を交わす、作者・演者に伝えたいことがあるならアンケートに書く、という、ブログなんてところでこんな不毛なことを言うの?という見解に落ち着くわけですが。
様々な事情で劇場に行けない人がせめてネットの拾い読みでも、と思って例えば我がブログに流れついてくれたとしたら、なるべくその現場の空気をお伝えできるような感想文を書けたらいいな、と思ったりもしています。そして、良いこと書いていようが悪いこと書いていようが、ただ「へ~」って思ってもらえれば、それでいいんです。
ネット上に溢れる様々な「感想文」。みんなが「へ~」っていう気持ちで読むだけ読んで、そしてそれを確かめるために、行ける人は劇場という現場へ実際に行ってみる。
そういう風な流れであるならば、演劇における観客の種類も多種多様になり、そのことが影響して演劇を作る側も多種多様になる、そんな愉しい方向に演劇界が動くのではないかなと思います。
このリーフレットを読んだ時から、ずっとまとめてみたかったことを書いてみました。
長々読んで下さり、ありがとうございました!
コメント
言葉も世界観も 自分の脳から取り出すと表情が微妙に変わっちゃうんですよね
伝えられないのはもどかしい
もどかしい世界の中でも さらにもどかしい位置で頑張っている野田さんはじめ いろんな方の努力って物凄いと思う
でもさ 芝居が始まって 劇場が温まってきて 客席にも生まれてくる一体感が感じられる舞台って驚くほどに心地よい♪
劇評に限らず匿名ってこわいこともあるなぁと思う場合が多いです
~みたいだよ。~らしいよ。~って書いてあった。関係者談(笑)
無責任発言で互いに攻撃しあうの
本人不在、発言者も匿名のままで…
何のための評価・意見なのかわかんない
マイナスのオーラが渦巻いています ぐるぐる
メールも手紙もブログもその他媒体でも 主語は私で プラスの感情てんこ盛りで お届けしたいと思っているわたまめなのでした
●わたまめさん
そうそう。
伝えたいことって中々そのままでは言葉に変換できないですよね。
表現者も観客も、想いを表すことは難しいと思います。
でも劇場内で、お互いの気持ちって、すでに通じているのだと思います。
(あるいはもし通じない部分があれば、表現者はすでにその現場で何かを感じとっているのではないかなと)
舞台って、肌で感じて、気持ちよくなれるもんだなあと思います。
だからそんな舞台をもっとみんなで楽しめるように、
私が観てきたものはこうで、私はこう感じたよ、
観に行けたらいってみてね、というレポができればいいなって、
この野田さんの文章を読んで改めて思ったのです。
匿名の世界って、本当にマイナスのオーラが渦巻いちゃいますよね。
(玖保倉庫って、そういう意味では本当に稀有な場所ですよね!)
私もハンドルネームだって私であるという意識でブログを、
その他の場所でも私で発信したいと思っています ^ ^