原作:向田邦子 脚色・演出:立川志らく
2006/12/24(日)18:00開演 於:新宿シアターモリエール
ラーメンズの片桐仁さん目当てに今年6月に拝見した下町ダニーローズ公演「はなび」(於:theatre iwato)がきっかけで、志らくさんの作るお芝居に魅了されました。
言葉の達人である落語家さんが作り、演じる芝居。「はなび」においては江戸人情ものという自分にとってあまり見慣れない世界が新鮮でもあり、こんな世界を知らないのはもったいないと思わされた芝居でもありました。
たった1回の観劇ではあったものの、愛着をもったダニーローズの役者さんも参加する「あ・うん」には、今回も出演が決まった片桐さんへの思いも含め、大きな期待を抱いて観劇に臨みました。
幸運にも最前列で拝見できたお陰で、人様の頭で視界が遮られることもなく、また狭い小屋ならではの間隔を空けずに目の前がもう舞台という好条件。どっぷり「あ・うん」の世界に浸ることができました。
始終、胸の奥に熱いものが湧いてくる舞台でした。
男の友情、夫婦の愛情、男女の愛情、そして愛憎。
私の胸が一番熱くなったのは、門倉のセリフだったでしょうか、家族、またはその他の様々な人間関係は「将棋崩し」の時に作る将棋の駒の山の形みたいなものだという件。どんなに崩れそうに見えても歪でも、その形だからこそバランスを保ってそこに存在していられる、傍目にはおかしいことになっていそうでも、それがその人たちの生きていく為に保たれた「形」なのだと。
ふと子供の頃にTVで見た「時間ですよ」や「寺内貫太郎一家」を思い出しました。今から思えば普通とは言い切れない家族の物語だったなあと。笑って見ていたけど、子供心に胸が痛くなる瞬間もきちんとあるドラマであったなと。
そして改めて、向田邦子という人は何故こんなにも様々な形の人間模様を描くことができたのだろうと感嘆しました。一対一の人間関係のみではなく、構成する人物すべてを絡めて作り上げるドラマは確かにどこかに存在する「現実」でもあると思いました。己の「現実」とも薄っすらリンクしました。
劇場で買ったパンフレットにあった志らくさんのお言葉、「面白いなんて芝居にはしません。魂が揺れる芝居にいたします」- 客席の魂はきちんと揺れていたと思います。
片桐さんのお陰で志らくさんとそのお芝居に出会えた。
改めて感謝した夜でした。