W.シェイクスピア「リチャード三世」より
2007/7/6(金)19:00開演 於:世田谷パブリックシアター
作:河合祥一郎/演出:野村萬斎/作調:田中傳左衛門/衣裳:コシノジュンコ
観てから大分時間が経ちましたが、感想を書きたかったので書きます。
念願だった野村萬斎さんの舞台。拝見できて大感激。
萬斎さんが芸術監督を努められている世田谷パブリックシアターにてのシェイクスピアシリーズ。シェイクスピアと聞くと、少し苦手意識がありましたが、狂言の発想から作られたその世界は想像していたものとは全く異なり、実にわかりやすくて、私にも順応できる物語でありました。
シェイクスピア=翻訳劇。翻訳劇のセリフはどうも耳にするっと入ってこない。
辞書で単語を調べて、それをそのまま並べたセリフの応酬・・・
眉間にしわ寄せて聴かなければ意味がわからない・・・
そんなイメージを持っておりました。
しかし、翻訳された河合祥一郎さんによりますと、本来シェイクスピアの作品は韻文で書かれているので、リズムが大切な戯曲であるということです。今回のセリフは日本の古典の言葉。その中で韻を踏むなどの言葉遊びがある。難しいことはわからないのですが、どんな材料でどんな味付けかよくわからないけど、食べると美味い和食を食べたような感じ。古典のセリフがすべて現代語に訳されて頭の中に流れ込む訳ではないのですが、とにかくするりと物語が自分の中に入ってくる。実に新鮮な体験でした。
なぜ家同士、果ては兄弟同士で殺し合わなければならないのか。
普通の翻訳劇だとわかりにくいところが、舞台が日本に置き換えられると実にすんなりと心に入ってくる。
お家同士の国盗り争い。兄弟といえども我が身を守るためにしなければならない身内との戦い。所を日本とされてみると「歴史的によくある話」として受取れる。そのハードルをクリアすることで、シェイクスピアの描いた人物たちの悲喜こもごもがより視界良く見えてくるのです。
今回初めての世田谷パブリックシアター。
どんな劇場かしらと期待をこめて足を踏み入れると・・・
劇場内に入った途端、そこは既に芝居の世界でした。
<夏草や兵どもが夢の跡>
蝉時雨。
所々朽ちて崩れた木の欄干と屋根が無い柱だけの建物の名残めいた舞台装置。
円形劇場の3階席に早い内から座り込んで、これから始まる物語の予兆を静かに感じていました。芝居が始まる前からその空間にいる幸せを感じていました。芝居空間。すべてを忘れて物語に集中できる場所。舞台が開く前から、良い劇場だな、と思いました。
3階のセンター席。
上から見下ろして、とても印象的だった場面があります。
舞台上に大きな満月のように照らされたライティング。
半径はおよそ人が一人横たわれる大きさ。その縁を縁取るように悪三郎(リチャード)が円に沿って歩く。
悪三郎の足元から伸びる影は、実際の影ではなく影法師の役者(じゅんじゅん)。影法師は半径の一筋の様に横たわり、その足先を実態である悪三郎の両の足にぴたりとあわせて横たわったまま悪三郎の動きの通りに共に歩く。つまり上から見ると、悪三郎の本当の影が映って、動いているように見える演出です。
芝居はなるべく上から眺めたい、そんな自分のこだわりが正解だったような一場面でした。
(もっとも、今回はもう3階席しか残っていなかったから3階で観たのですが)
私の近くに女子大生っぽい女子たちがグループで座っていました。
シェイクスピアを授業で課題としている子たちでしょうか。幕間に芝居なんかに全く関係ない遊園地の話なんかでわいわい盛り上がっている彼女たち。
特に萬斎さんのファンとか、芝居好きの女の子たちという感じではない。
その子たちが終演後、「面白かったね~」「そうだね~」と言い合っているのがなんだかうれしくて。(喜ぶ筋合いじゃないのですけれど)
萬斎さまが好き!芝居が好き!という人々だけでなく、こういった人たちに面白いと言わせたのはすごい、と思いました。これは芸術監督に報告したい!と思ってしまいました。
一人四役の白石加代子さん。素晴らしい。
この方を拝見できたことも幸せです。
そしてこの劇を見るきっかけとなってくれた大森博史さんには大感謝です。
シティボーイズライブの終わりの挨拶で、大森さんは次リチャード3世ですからね!の言葉を聞いて、観てみようと思った訳ですから。
大森さん、CBライブと印象、変わらなかったな・・・今後も要チェックな方です。
萬斎さんも、シェイクスピアも、これからもっと観て、知っていこうと思います。
コメント
いやん >ω< 観たいです~ おもしろそうじゃないですか こむさんのチョイスは、なんでこうイイんですか? シェイクスピア・・・というか翻訳劇や訳本は、名前が誰?誰?となって、いつの間にそんな展開に?意味がわかんないっ?となってしまうので苦手です
●まめさん
ま~こんな長いもの読んで頂いて、
ありがとうございましたです~!
私のチョイス、というよりも、
ここのところの観劇は「縁」で流れているような気がします。
CB→大森さん→萬斎さん・・・
並べてみると面白い流れw
シェイクスピアっていうと、漠然と話はわかるけど、
まず時代設定とか登場人物を把握しなければ・・・
なんて思ってるうちに訳分らず終わるというイメージでしたが、
萬斎さんの狂言風味のシェイクスピアはとても見やすい入りやすい。
ご縁があれば是非ご観劇を。
萬斎さまがリボンつきのマイクを握って、
女の子たちを従えて歌っちゃう場面なんかもあるのですよ~(>_<) ♪太く短く生きよじゃないか~ ケセラセラ~(byリチャード) って。 あ、いかんいかん、また長くなっちゃった・・・