「ファウストの悲劇」

2010/7/15(木)14:00開演 於:シアターコクーン
公式HP
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/10_faust/index.html
萬斎様のお芝居ということで観てきました。
ポスター写真だけで、もうこれは観ないと!って思い、で、劇場に着いて、ところでこれ演出誰だっけ?なんて思った阿呆ぶり・・・
蜷川演出ものも久しぶりに観ました。


劇場内はまるで歌舞伎小屋。舞台には定式幕がかかり、客席内には赤い提灯がぶら下げられている。この辺ですでに蜷川ワールドを感じる。
私が蜷川さんに期待しているのは‘リアリティのあるニセモノの世界’。この点ではのっけから満足のいく劇場空間であった。
クリストファー・マーロウの作品を劇中劇として一座が公演するという入れ子の構造を、舞台奥に設けられたマジックミラー越しに覗くことができる楽屋と舞台下の壁を取っ払って見せる奈落で、そこが小屋であるという演出を、視覚的にもはっきりと見せている。むき出しにされた楽屋裏の光景を覗くことで、架空の一座の公演に迷い込んだ幻想を楽しませてくれる。舞台前では芝居が進行しているのに、一方透けて見える舞台奥の楽屋では板に出ていない役者が銘々着替えたり、くつろいだり、談笑したり。奈落ではホウキを持った人が底を掃いて片づけをしていたり。
奈落を開けちゃったのは初めて見たな~下からもうスタンバイしている役者さんの芝居が見えるわけだから、前方のお客さんは臨場感たっぷりで楽しかったでしょうね。1階客席の通路も結構行き来していたし。私は2階席だったのですが、1回だけ勝村さんが来てくれて面白かったです。近くで迫力の演技を見られてラッキーでした。去って行く時は「ご協力ありがとうございました」と客に対して礼儀正しい悪魔に(笑)
あらゆる知識を身につけ、それでも飽き足らず、悪の力を得ようとするファウスト役は、萬斎さんに似合っていたと思います。冷静さと狂気と、舞台に佇んだだけでそのどちらもが立ち昇ってくるようです。
ファウストの野望は、イコール人間そのものではないか、とも思えました。
理性で封じ込めている人間のあらゆる欲望を、ファウスト博士は自分に許します。ファウストのキャラクターは、誇張された人間の姿、というようにも思えました。人間の本心の解放、とでも表現したら良いのでしょうか。こんなことを感じてしまうということは、自分の中にも狂気があるということなのでしょうかねぇ。。
今回、勝村さんがステキでした!悪魔なのに白い衣装で。でもそれが却って存在感を出していて。ご本人がパンフレットでは難しいと仰っているメフィストフェレスでしたが、がっしりとファウスト博士を捕らえていましたよ。最後ファウストを地獄へ運ぶ場面がステキだったな~
(パンフを読むと演出意図がわかるのですが・・・意味はどうあれ今回は乙女スイッチがオンになる場面が多々(*^ ^*))
そして走らされる場面があるところなどは。蜷川さんと勝村さんの関係性をよく表していて、内心笑ってしまいました。勝村さん、頑張れ~w
白井さんをはじめ、他の役者さんは複数の役をされていて大変でしたね~
私が今回初めて拝見する長塚さんは出番が少なく、ファンの方には物足りなかったかしらとも。
そうそう、スモークと火薬の量も凄かったですね(笑)
この戯曲は正直改めて本を読まないと頭に入ってこないセリフもありまして、確かに難解な作品であるらしいと認識しました。
その難解な戯曲をわかりやすく観客に届けようという気持ちなども感じて、挑戦するカンパニーの気合も十分感じました。
パンフで笑わせてもらったのは。
稽古場の雰囲気、蜷川演出を受けての感想を、という質問に対するマメ山田さんのコメント。
「最近はどこの稽古場も禁煙で灰皿も飛ばずなごやかです」
はははは!飛ばせる灰皿が無いんだ!名物?灰皿飛ばしが見られないらしい、ということですね。いや~禁煙の波と影響は蜷川稽古場にもやってくるのか、そうかそうかw
肝心の戯曲詳細は機会があったら再度確認・おさらいということで。
これも観ておいて良かった作品でした。

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