「秋のソナタ」

BSでイングリッド・バーグマンが取り上げられた時に知った映画です。
録画しておいたものを観ました。
最初から最後まで、とにかく見入ってしまいました。
娘と母の間に横たわる永遠の確執。
娘の役も、母の役も、事前の役作りをとことんやったのであろうなと想像できる、渾身の演技・作品だと思います。
名女優であると聞いていたリヴ・ウルマンの演技は、演技ではなく、エヴァという女性が本当にそこに生きているかのように思われる、素晴らしいものです。
イングリッド・バーグマンの瞳の力の美しさ。私はこういう人間であるという形を崩すことなく演じ上げることで、娘と同じ重さの苦しみと悲しみを見る者に表している、そう思えます。
娘と母、このどちらかに観る側が偏った感情移入をするよりも、公平にふたりの感情を受け止める見方である方が、この物語の中枢に深く入っていける、そう感じました。
それは観る人の年齢にもよるかもしれません。私はこの年齢で見て良かったと思います。冷静にふたりを見ることができたからです。
娘の気持ちも母の気持ちも、どちらも理解することができ、過去から続く呪縛の時間から動くことができないふたりの気持ちが伝わり、私の気持ちもどちらにも傾くことなく、間で身動きの取れぬまま、ただその痛みと悲しみを感じ続ける1時間30分でありました。
親に愛情をきちんと注がれなかった子供はそれを自分の子供に繰り返す、そんなことも語られていますが、学術的な理屈の上だけの理解を求めるような作品ではないと思います。
もっと生身の、生々しい、過去の傷を持ち続けながらも今生きているその息遣い、娘という‘私’の感情と母という‘私’の感情が、むき出しに流されていく、それぞれの体温を頭ではなく皮膚感覚でも感じ取ることができる。
最終的な赦す赦さないは時が結論を出すことであろう。ただ今、私たちはこんな気持ちでいるのだ、過去言えなかったことはこんなことだったのだ、という告白を浴びることに、この作品の中核はあるのではないか、そういう風にも思えるのです。
見ごたえがある映画でした。これは舞台でも良いと思います。

タイトルとURLをコピーしました