2010/8/29(日)12:00開演 於:シアタークリエ
http://www.takarazuka-boys.jp/
再々演。今回は観ないかな・・・とぼんやり思っていましたが、先日の大幸運、稽古場見学で、今回のBOYSさんとの縁を勝手に感じ、というか、実際キャストさんと出会うと情が湧いて、今回も千秋楽間近に拝見してきました。
いやあ、東宝演劇部さんの努力が実を結びましたね。なーんて ^ ^
東京は無事千秋楽。あとは関西公演ですね。
感想など。
何故、今回は観ないかも、と思ったのか。それは再演の時、いささか笑いの場面に頼っていないか?アドリブを許しすぎではないか?それゆえ、本来の物語に流れる精神を損ねることになったのではないか?という、やや解せぬ心持を抱えたまま楽を迎えたことから。
そこに加えて、キャスト一新で俳優さんの顔ぶれを見た時に、もしかしたら、イケメン目当ての客を見込んだ定番興行にしようとしている?なんて、これまた勝手に勘ぐったりしてのことで・・・
しかし、実際に観てみないとわからないもので。
今回のBOYS、私は良いと思いました。
今回の発見は、この物語に適度な笑いや情を持たせる為の配役の妙。
山田と太田川、このふたりがどこまでやるか、どう演じるのかが、キーポイントのような気がしました。(まあ結局何が言いたいのかというと、前回のふたりがやりすぎた、という印象が拭えないから ^ ^ ;)
太田川の瀧川さん、良かったです。にぎやかしなキャラの中にもそこはかとない哀愁も湛えており、病気のために戦争に行けなかったこと、宝塚を一度は辞めて、でもその夢が捨てきれなかったこと、背負っているものが成る程あったのだという感慨を、後半の芝居でちゃんと感じさせてくれました。
山田の黄川田さん、ちょっとかっこよすぎましたが、このキャラが持つ性質ゆえつい芝居が前へ前へとのめって行きがちなところが押さえられて、これまた流れに良いバランスを生んだと思います。
そして今回のっけから胸にずどんと来たのは、池田氏の立場と苦悩。若い連中は血気盛んに上層部への不満をぶちまけられるが、感情を抑え、中間で支えている微妙な立場の人間が実は一番辛いのだという思いが、どうにも感じられて(それこそリアルに余計な想像までして)、辛かったです。男子部が廃部になるまでの経過と結末を知っているから余計に沁みたのかも。夢を叶えたくても無理なことは無理なんだ、でももしかしたら叶う、それを自分も信じたかった、そんな気持ちについてオープニングから考えてしまいました。そしてその考えは、最後のレビューシーン、廃部が決まった後のレビューの前、池田氏が暗い中しばらくひとり大階段のあるセットを眺める場面に涙をもたらしました。演出家の方、あるいは演出がやりたいのに演出以外の仕事で舞台を支えている方、そんな演出家魂を持つ人が見たら、BOYSとはまた違う痛みの共有が生まれるのではないかなと思いました。
キャストのみなさん、まとまりが良かったと思います。
浦井さんは花緑さんの演技を踏襲していたようにお見受けしました。素朴で実直。上原のキャラも私にとっては重要だったので、イメージが壊れず嬉しかったです。
東山さん、いいわw星野はみんなよりも興行界擦れした大人っぽさが必要だと、これまた前回の吉野さんのイメージからなのですが、こちらも雰囲気バリバリに出ていて良かったです。
藤岡さんの歌が素晴らしいですよね~私前役の葛山さんの「モン・パリ」が大好きだったんですが、藤岡さんも好き。男子部解散と聞いて池田氏に掴みかかる演技の迫力に、当時の人の魂が乗り移ったのではないかと感じさせられました。
太陽くんはそのまま素朴な人柄で。旅芸人の血を引いて女好き、っていう役どころだったんだな~なんて、パンフ読んで改めて長谷川という役についても認識しました。
石井さん(美男子!)、お父さんの戦死通知を受取った場面の嘆きは、十分客席に突き刺さっていたと思います。
この戯曲の背景には、戦争で死ねなかった人(現代の我々には到底わからない‘死ななかった’のではなく‘死ねなかった’という思い)が死んでいった仲間たちに恥じぬよう生きていく、その真摯さをおろそかにしてはならないという精神が存在します。
その真摯さを、現代の演者も観客も、きちんと気持ちの中に持って臨めれば、この物語はこれからもずっと語り継がれて行く。
宝塚という夢の以前に、彼らには奪われたものがたくさんある。その彼らが新しい未来に新しい夢を求めるお話。
舞台が好き。レビューが好き。その共通項を持った人たちで、戦争とは何であったのかを、一緒に考える時間を共有できる劇空間は大変貴重であると思います。
是非今後とも、上演していって頂きたい作品です。
この芝居を観た後に必ず思う、舞台が好き、そう強く思います。
今この平和な国でたくさんの舞台が観られることを感謝しつつ。
BOYSのみなさん、初風さん、山路さん、今回も夢をありがとうございました!